3−1 スターティングハンド
(1)総論
スターティングハンドのランクについては、様々なポーカー本において基準が設けられておりますが、絶対的なものではなく、またあまり意味のないものだとするプロもいます。
しかしながら、大まかにスターティングハンドの強さを把握しておくことは有用なのでDavid Sklanskyがグループ分けしたスターティングハンドのランキングを紹介します*1。Group1が一番強くGroup7が一番弱いグループで、左から右にかけて弱くなっていくものです。
Group 1: AA, KK, AKs
Group 2: QQ, JJ, AK, AQs, AJs, KQs
Group 3: TT, AQ, ATs, KJs, QJs, JTs
Group 4: 99, 88, AJ, AT, KQ, KTs, QTs, J9s, T9s, 98s
Group 5: 77, 66, A9s, A5s-A2s, K9s, KJ, KT, QJ, QT, Q9s, JT, QJ, T8s, 97s, 87s, 76s, 65s
Group 6: 55, 44, 33, 22, K9, J9, 86s
Group 7: T9, 98, 85s
Group 8: Q9, J8, T8, 87, 76, 65
あくまでもこのランキングは基本であって、ポジションや参加者の数、ベットの状況などで変わってくるので注意が必要です。次に、参加するスターティングハンドを決定する際に考慮すべき事項について検討します。
(2)ポテンシャルを秘めたハンド
Lee Nelsonは、序盤で大きな役を完成させる可能性を秘めたハンドを多くプレイすることが有用だとしています*2。確かにAAはプリフロップにおいては最強のハンドで、75oでは太刀打ちできません。しかしながら、ボードが346XXレインボーだった場合には、AAで大きな損失を受けずにいることは非常に困難となり、一方、75oは非常に大きな利益を上げることができます。このようにボードにマッチした場合に大きな利益を上げる可能性のあるハンドのことをNelsonは、「Speculative hand(投機的なハンド)」と表現しています。このようなポテンシャルのあるハンドの例としては、次のようなものが挙げられます。
(ア)ポケットペア
ポケットペアは、セットを引いた場合に相手に気付かれることが少なく(セットの脅威)、また非常に強くなることから、インプライドオッズが高いため、大きなポテンシャルを秘めたハンドであると言えます。フロップでセット(又はクワッド)を引く確率は、11.53%であり、およそ8.7回に1回は、フロップでセット以上ができることになります。セットができた場合にオリジナルレイザーのチップをすべて奪えると思うのであれば、自分と相手のスタックの双方が、プリフロップでのレイズ額の約9倍以上ある場合には、コールすることがオッズに合うことになります。
(イ)ドローハンド
フロップストレートも非常に読まれにくく引けた場合には大きな利益をあげられるため、ストレートになり得るコネクター、1〜3ギャップコネクターもポテンシャルを秘めたハンドであると言えます。フロップでストレートを引く確率は、コネクターで1%強、1ギャップで1%なのでセットほど確率は高くありませんが、2ペアになる可能性も2%ありますので、あまり大きくないレイズにはコールできることとなります。
一方、フラッシュになり得るスーティッドカードについては、AXs以外はフラッシュを引いたとしても大きく負ける可能性も高くなるため注意が必要です。なお、フロップでフラッシュを引く可能性は0.8%程度です。また、A9s以下のAXsについては、ナッツフラッシュを引く可能性よりAがヒットしてフォールドできなくなり、キッカー負けで大きな損失を被る可能性が高いため、ポジションが悪い場合には参加しない方がよいとするプロもいます*3。しかしながら、AXsはKXsやQXsなどとぶつかったときに大きく利益をあげられるハンドでもあるので、大きなポテンシャルを秘めたハンドであると言えるでしょう。
Lee Nelsonは、5&10%ルールを提唱し、相手のレイズ額がスタックの5%以下ならポテンシャルのあるハンドでレイズにコールし、レイズ額がスタックの10%以上ならフォールドすべきとしています*4。
(ウ)ドミネイトハンド
ドミネイトしていることが多いハンドも高い利益を上げられるハンドと言えます。典型的な例は、AKです。AKでAヒットしている際に、AQやAJがいて相手がフォールドできないプレイヤーである場合には、大きな利益を上げることができます。しかしながら、AKのAヒットでA3のツーペアなどとぶつかった場合は、逆にドミネイトされているため、大きな損失を被る可能性がある点にも留意が必要です。このような事態が生じる可能性を低くする手法の一つとして、AKについてはプリフロップでリレイズすることを推奨する者も多いです。
*1: David Sklansky, HOLD'EM POKER, Creel Printing Co., p19 (2004).
*2:Kill everyone, p6.
*3:Phil Gordon, 5 Common Hold’em Leaks, Full Tilt Poker Academy, http://academy.fulltiltpoker.com/ja/lessons/video/50/vf/1/
*4:Kill everyone, p55.